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しっておくべき制度と用語

経営資源集約化税制(M&A準備金積立制度)

2022.11.22
企業再生

 

令和3年度税制改正により「経営資源集約化税制」が創設され、M&Aの買収側企業は経営力向上計画の認定を受ければ、期間限定で「設備投資減税」「準備金積立制度」による税の優遇措置が受けられるようになった。

 

本記事では「準備金積立制度」について解説する。

 

準備金積立制度とは、中小企業者が令和6年3月末までに株式の取得によりM&Aを実施した場合に株価取得価格の70%相当額を準備金として積み立てると、その金額を法人税法上の損金として取り扱うことができるという制度である。

 

10億円までのM&Aが本制度の対象となり、最大で7億円の所得を減らす効果があることから、一時的なタックスプランニングには大いに役立つと思われる。

 

ただし、積み立てた準備金は5年間据え置いた後に、5年間かけて均等に取崩益を計上する必要があり、取崩益には課税が発生するため恒久的な節税にはならない点は注意したい。

また、据置期間経過前であっても、減損処理や株式売却等の取崩要件に該当した場合は準備金の取崩益計上が必要となる。

 

 

準備金制度の適用に際しては下記要件をクリアする必要がある。

 

 

1. 税制優遇を受ける買い手企業自身が、資本金又は出資金の額が1億円以下、かつ常時使用する従業員数が2,000人以下の法人であること

 

2.買収される会社の従業員が2,000人以下、買い手企業と同族会社でなく、事業の承継を伴う取り組みであること。またM&Aの価格は10億円以下であること。

 

3. M&Aの方法は株式の取得もしくは持分の取得であって、事業譲渡や合併等ではないこと。

 

4.M&Aの実施に際してデュー・デリジェンスを行うこと。

 

5. 基本合意後で最終合意前に、デュー・デリジェンスの内容を踏まえた経営力向上計画について主務大臣の認定を受けること。

 

6. M&A実行後確定申告期限までに主務大臣に報告し、確認書の交付を受けること。

 

7. 税務申告時に主務大臣への申請書や、交付をうけた認定書、確認書の写しを添付すること。

 

準備金積立制度のメリットは減税効果であり、M&Aの規模にもよるが、他の節税施策よりも多額の減税効果を受けられる可能性が高い点が魅力である。

 

一方で準備金積立制度のデメリットは手続きが煩雑な点、準備金積立制度ありきでスキームを計画するとM&Aにより思わぬリスクを抱えてしまう可能性がある点であると考える。

 

準備金積立制度を活用するときは株式の取得もしくは持分の取得スキームしか認められず、事業譲渡や合併等のスキームを選択することができない。

 

株式の取得による買収は、買い手が様々なリスクを包括的に引き受けることを意味するため、M&A実行前のデュー・デリジェンスによるリスクの抽出が非常に重要である。

 

露見したリスクが許容できない場合は、準備金積立制度の活用をとりやめ、事業譲渡等で限定的に事業を引き受けるようなスキームの選択も検討すべきである。

 

準備金積立制度にはデメリットはあるものの、その減税効果は(一時的とはいえ)著しく大きいので、買収を計画している企業はぜひ活用したい。

 

当会計事務所はM&A時の財務デュー・デリジェンス及び財務アドバイス業務に豊富な経験を有しているため、準備金積立制度の活用検討の際にはぜひご相談いただきたい。

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2022.11.22

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