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しっておくべき制度と用語

DDS(デット・デット・スワップ)と資本性借入金

2014.08.18
ファイナンス

1 デット・デット・スワップの概要

 

デット・デット・スワップ(以下、「DDS」)とは、債権者が既存の債権を別の条件の債権に変更する手続きのことである。企業再生の場面では、通常、金融機関が既存の貸出債権を他の一般債権よりも返済順位の低い劣後ローンに切替える手法のことをいう。劣後ローンは、設計にもよるが、優先株と性質が似ており、銀行の債務者企業に対する審査では自己資本とみなすことができるとされている。

 

劣後ローンは、債務者が破綻した場合にその他の債権よりも回収が劣後するため、金利を高く設定するのが一般的であるし、経済合理的であるが、企業再生の場面でDDSによって変更された劣後ローンは金利が通常債権よりも低く設定される。これは、企業再生の現場で行われるDDSが、主に毀損した自己資本の穴埋めを目的としており、変更される劣後ローンは、金融庁の監督指針上資本とみなされる「資本性借入金」と呼ばれる要件を満たす必要があるからである。資本性借入金の要件の1つには、配当可能利益に応じた金利設定がなされることがあげられており、DDSの対象となる企業は通常配当可能利益など目先ないので、結果として金利も事務コスト程度(0.5%程度)となるのである。

 

2 DDSによる資本性借入金のメリット・デメリット

 

資本性借入金であっても、法的にも会計的にも借入金が本当に資本になるわけではないので、貸借対照表の見た目に変化はない。そして、資本とみなすことができるといっても、金融機関ごとに判断は異なり、私の経験上、DDSによる資本性借入金で債務超過を埋め合わせたとしても、直ぐに新規の金融機関から融資を受けられるケースは稀である。 それに加え、DDSを受ける場合、以下のようなデメリットも考慮しておかなければならない。

 

デメリット1 経営者責任・保証人責任が問われる場合がある

DDSは債務カットのように金融機関の損失が確定するわけではないが、資本性借入金金額の100%の貸倒引当金を計上しなければならないため、金融機関にとっては大きな負担となる。そのため、債務カットを受ける場合ほど厳しくはないものの、代表者や経営悪化の責任がある取締役の退任を求められる可能性がある(ただし、代表者が退任したとしても、その子弟が後任となるケースも多く、完全に第三者に経営権が移ってしまうことは稀である)。また、保証人責任として何某かの個人資産の提供を求められる場合もある。

 

デメリット2 コベナンツが設定される

コベナンツとは、融資契約に付される債務者側の義務や制限のことである。この義務を怠った場合や制限に違反した場合には何らかのペナルティが課され、最悪の場合には期限の利益を喪失して一括弁済を迫られる。資本性借入金では、通常、毎月何日までに試算表を提出するなどの情報開示義務や、2期連続で赤字を計上しないなどの財務制限、金融機関の同意なしに一定額以上の投資をしないなどの投資制限、などが課せられる。

コベナンツに違反したからといって、常に直ちにペナルティが課せられるわけではないので過度に心配する必要はないが、例えばそれなりの規模の企業に対して500万円以上の投資について金融機関の同意が必要といったコベナンツが付されると、頻繁に金融機関の同意を得なければならず、現実問題としてかなり面倒ではある。

 

これらのデメリットはあるものの、DDSによる資本性借入金には、以下のようなメリットがあり、上手く活用すれば会社の財務状態を大きく改善することができる。

 

メリット1 金利が低くなる

前述したように企業再生の場面でDDSが行われた場合、DDSによる資本性借入金の金利は1%以下となるのが普通である。昨今の金利情勢では1%以下といってもそれほどお得感はないようにも感じるが、再生局面の企業の借入金金利は通常の企業より高いケースが多いので、メリットが大きい。

 

メリット2 約定弁済がなくなる

資本性借入金は5年以上の期日一括返済が要件とされており、毎月の約定弁済の負担がなくなる。借入金全てが資本性借入金になるわけではなく、DDSの対象とならなかった借入金については返済が発生するので、返済期日のリスケジュールとあまり変わらないではないか、との考え方もあるが、資本性借入金以外の借入金を10年程度で返済する目途が立てば、返済猶予を受けていない正常な状態にできる可能性があるので、その点はメリットである。

 

メリット3 債務者区分を上げる効果がある

資本性借入金は金融機関の査定上資本とみなすことができるので、DDSされた金額分だけ債務超過が減少することになる。また、資本性借入金とならなかった借入金についても、債務償還年数が減少するので、債務超過の減少と合わせて金融機関の債務者区分を引き上げる効果がある。DDSを受ける企業の債務者区分は破綻懸念先又は要管理先となっていて借入金もリスケジュールされている場合が多く、通常より金利も高いのが普通であるが、債務者区分が正常先となれば、資本性借入金とならなかった借入金についても通常の融資に借換えられる可能性があり、その場合は金利も引き下げられる可能性がある。また、正常先になれば新規の融資も受け易くなる。

 

以上のように、制約はあるものの、DDSによる資本性借入金は上手く活用すればメリットが大きい。数字がないと具体的な効果が分かり難いと思うので、次回は事例を用いてより具体的にDDSを行った場合の効果を解説する。

2014.08.18

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