償却資産税の取得価額を算定する場合の消費税の取り扱いについて
2022.02.17
しっておくべき制度と用語
いわゆる償却資産税は、
土地及び家屋以外の事業の用に供することができる資産を課税対象とする固定資産税の一部分のことであり、償却資産税の課税標準は、賦課期日における当該償却資産の価格で償却資産課税台帳に登録されたものとされている(地方税法第349条2項)。
また、償却資産の所有者は、毎年1月1日現在における当該償却資産について、
その所在、種類、数量、取得時期、取得価額、耐用年数、見積価額その他償却資産課税台帳の登録及び当該償却資産の価格の決定に必要な事項を1月31日までに当該償却資産の所在地の市町村長に申告しなければならないこととされている(地方税法第383条)。
この申告にあたって、消費税の取扱いに疑問が生じた経理担当者も多いのではないだろうか。
固定資産税は、課税標準に標準税率1.4%を乗じて算出することから、
ある償却資産の取得価額について、消費税を含めた金額又は含めない金額を申告するかで、算出される税額が大きく異なるためである。
この点について、東京都主税局をはじめ、地方自治体の固定資産税担当課では、概ね以下のように解説をしているが、その法令上の根拠は示されていない。
また、地方税法においても、償却資産の取得価額の算定における消費税の取扱いについて明文の規定は存在しない。
東京都主税局のQ&Aより
「償却資産の取得価額の算定に当たり、消費税については、税務上採用している経理方式により申告してください。
(税抜経理方式であれば消費税を含まない価額で、税込経理方式であれば消費税を含む価額で申告してください。)」
大阪市財政局のQ&Aより
「償却資産の取得価額を算定する場合の消費税の取り扱いについてはどうすればよいですか?
法人税または所得税の会計処理において、税抜経理方式を採用している場合は消費税を含まない金額となり、
税込経理方式を採用している場合は消費税を含んだ金額となります。」
そこで次に、固定資産税評価基準(地方法税388条に基づき、総務大臣により定められる固定資産の評価の基準並びに評価の実施の方法及び手続き)を確認すると、
固定資産評価基準第3章第1節六に次のような記載がある。
「償却資産の取得価額は、本章に特別の定めがある場合を除くほか、法人税法及びこれに基づく命令又は所得税法及びこれに基づく命令による所得の計算上当該償却資産の減価償却費の計算の基礎となる取得価額の算定の方法の例によって算定するものとする。」
そこで、法人税法における取得価額の考え方について確認をすると、法令解釈通達「消費税法等の施行に伴う法人税の取扱いについて」において、次のような説明がされている。
9令第133条(少額の減価償却資産の取得価額の損金算入)、
令第133条の2(一括償却資産の損金算入)又は令第134条(繰延資産となる費用のうち少額のものの損金算入)の規定を適用する場合において、
これらの規定における金額基準を満たしているかどうかは、法人が適用している税抜経理方式又は税込経理方式に応じ、その適用している方式により算定した価額により判定する。
措置法に規定する特別償却等において定められている金額基準又は措置法第61条の4第4項第2号(交際費等の範囲から除かれる飲食等のために要する費用)
に規定する金額基準についても、同様とする。
この法令解釈通達を見ると、消費税の税抜経理方式又は税込経理方式により、
取扱いに差異が生じ得る場合には、その法人が適用している経理方式に沿って処理を行うことを国税庁としては原則としていることがわかる。
その解釈の是非はともかくとして、実務上は上記のようなロジックで償却資産の申告に当たっては、
税抜経理方式を採用している法人は税抜金額で、税込経理方式を採用している法人は税込金額で申告しなければならないことからすると、
現在税込経理方式を採用している法人については、税抜経理方式への移行を検討したほうがよいだろう。
2022.02.17