後継者が読むべき決算書 第2回 会社の体力と収益力はどこに表れるか
2026.10.07
税務
B/Sには創業以来の経営の蓄積が表れ、P/Lには一定期間の経営成績が表れます。
二つをつなげて読むことで、会社が何によって利益を生み、その利益をどのような財務基盤へ変えてきたのかが見えてきます。
B/Sで見るのは資産の多さではなく中身である
貸借対照表の左側には資産、右側には負債と純資産が並びます。
資産は会社が保有する経済的資源であり、負債と純資産は、その資源を債権者からの資金と株主からの資金でどのように賄ったかを示します。左右が一致するのは、同じ資金を「使途」と「調達源泉」の両面から記録しているためです。
資産が大きければ安全とは限りません。
在庫や回収の遅い売掛金が膨らめば、帳簿上の資産は増えても支払能力は弱くなります。反対に、設備投資によって現預金が減っていても、その投資が将来の収益を生むものであれば、単純に悪化とはいえません。
確認すべきは、資産の額よりも、換金性、回収可能性、収益への貢献です。
| 見る数字 | 確認すること | 注意すべき兆候 |
|---|---|---|
| 現預金 | 固定費と返済を何か月賄えるか | 利益は出ているのに減少が続く |
| 売掛金 | 売上の伸びと釣り合っているか | 回収サイトの長期化、滞留 |
| 棚卸資産 | 販売計画に照らして適正か | 長期滞留、陳腐化、不採算在庫 |
| 借入金 | 返済額と営業CFが釣り合うか | 運転資金目的の借入が恒常化 |
| 純資産 | 利益の蓄積が進んでいるか | 赤字や資産流出で減少が続く |
流動比率は短期的な支払能力を見る一つの指標ですが、比率だけで安全性を断定することはできません。
流動資産に回収困難な売掛金や売れない在庫が多く含まれていれば、数値は高くても資金繰りは安定しません。
比率を見るときほど、その内訳を確かめる必要があります。
P/Lでは利益が薄くなる場所を探す
損益計算書は、売上高から費用を段階的に差し引き、どこで利益が生まれ、どこで薄くなったかを示します。
重要なのは最終利益だけではありません。売上総利益、営業利益、経常利益を順に見ることで、課題の所在を切り分けられます。
| 項目 | 計算 | 設例 |
|---|---|---|
| 売上高 | 顧客への販売額 | 1億円 |
| 売上総利益 | 売上高 − 売上原価 | 4,000万円 (粗利率40%) |
| 営業利益 | 売上総利益 − 販売費及び一般管理費 | 500万円 |
| 経常利益 | 営業利益 + 営業外損益 | 450万円 |
この設例で粗利率が前年並みなら、500万円しか営業利益が残らない原因は、人件費や家賃、広告費などの経費構造にある可能性があります。
反対に、売上が伸びても粗利率が低下しているなら、値引き、仕入価格、商品構成、原価管理を先に検討すべきです。
売上高だけを追っていると、成長しているように見えて実は収益力が弱くなっている状態を見逃します。
比較して初めて数字は経営情報になる
●前年との比較:何が、いつから、どの程度変わったかを確かめます。
●予算との比較:当初の見通しと実績の差を、数量・単価・原価・固定費に分けて考えます。
●同業他社との比較:業態や規模の違いを踏まえながら、自社特有の強みと課題を探ります。
決算書の数字は、それだけでは事実の記録にすぎません。
比較対象を置き、差が生じた理由を経営者の言葉で説明できるようになったとき、数字は意思決定に使える情報へ変わります。
税務の視点
純資産と税務上の所得は、それぞれ別の観点から確認する
非上場株式の評価では、会社規模や株主区分などに応じて、類似業種比準価額や純資産価額等が用いられます。
純資産の増加は会社の財務基盤を強くする一方、将来の株式評価に影響することがあります。承継直前ではなく、早い段階から推移を把握しておくことが重要です。
また、経常利益や当期純利益と、法人税の課税対象となる所得金額は一致しません。
決算見込みを確認するときは、税務上加算される項目も含めて納税額を試算する必要があります。
次回は、黒字でも現金が減る理由と、資金繰りをどう管理するかを取り上げます。
第3回「黒字でも会社は行き詰まる」へ
シリーズ「後継者が読むべき決算書」
- 第1回 決算書をもらったら最初に何を見るか
- 第2回 会社の体力と収益力はどこに表れるか(この記事)
- 第3回 黒字でも会社は行き詰まる
※本記事は2026年10月時点の法令等に基づく一般的な情報です。個別の判断については専門家にご相談ください。
2026.10.07




