年末調整は会社の義務なのか【令和8年分対応】根拠条文・罰則・対象外になる人を解説
2026.10.26
税務
毎年年末になると、会社の経理部では、年末調整の必要書類を従業員から集めたり、還付金額の計算を行ったりと、一気に慌ただしくなる。給与計算ソフトや年末調整ツールの導入で手間は減ったものの、毎年の税制改正で、確認すべき事項はむしろ増えている印象もある。
そうなると、「そもそも年末調整は会社がやらなければいけないのか」「従業員に各自で確定申告をしてもらえないのか」と考えたくなる。本記事では、この疑問にお答えする。
この記事でわかること
・年末調整が会社の義務とされる法的な根拠
・年末調整の対象外になる人
・年末調整をしなかった場合の罰則
・令和8年分の年末調整の主な改正点
年末調整は会社の義務である
結論からいえば、年末調整は給与の支払者(会社)がしなければならない義務である。根拠は所得税法第190条で、次のように定められている。
所得税法 第190条(一部省略)
給与所得者の扶養控除等申告書を提出した居住者で、第1号に規定するその年中に支払うべきことが確定した給与等の金額が2,000万円以下であるものに対し、その提出の際に経由した給与等の支払者がその年最後に給与等の支払をする場合において、同号に掲げる所得税の額の合計額がその年最後に給与等の支払をする時の現況により計算した第2号に掲げる税額に比し過不足があるときは、その超過額は、その年最後に給与等の支払をする際徴収すべき所得税に充当し、その不足額は、その年最後に給与等の支払をする際徴収してその徴収の日の属する月の翌月10日までに国に納付しなければならない。
つまり、扶養控除等申告書を提出した従業員について、1年間に源泉徴収した所得税と本来の年税額との過不足を精算することが、会社に義務づけられている。
ちなみに、アメリカには年末調整という制度はなく、給与所得者も各自で確定申告を行っている。日本の年末調整は、会社が従業員に代わって税金の精算を行う、日本独特の仕組みといえる。
年末調整の対象外になる人
条文のとおり、年末調整の対象は「扶養控除等申告書を提出した者」で「その年の給与等の金額が2,000万円以下の者」である。次のような人は対象外となり、本人が確定申告を行う。
年末調整の対象外になる人
・扶養控除等申告書を提出していない人(2か所以上から給与を受けている人の従たる勤務先など)
・その年の給与等の金額が2,000万円を超える人
年末調整をしないとどうなる?罰則
年末調整を怠った場合や、徴収した税金を納付しなかった場合には、次の罰則が定められている。
| 根拠 | 対象となる行為 | 罰則 |
|---|---|---|
| 所得税法 第242条 |
年末調整による源泉徴収をしなかった | 1年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金 |
| 所得税法 第240条 |
徴収した所得税を国に納付しなかった | 10年以下の拘禁刑若しくは200万円以下の罰金、又はその併科 |
※令和7年6月の刑法改正により、従来の「懲役」は「拘禁刑」に改められている。
人員不足や多忙を理由に、年末調整をしないという判断は、決してするべきではない。
従業員が了承すれば省略できる?
「従業員が自分で確定申告をすると言っているのだから、会社は年末調整をしなくてもよいのでは」と考える経営者の方もいるかもしれない。
注意 法令上、従業員の了承があれば年末調整を省略できるといった規定はない。扶養控除等申告書を提出している従業員については、たとえ本人が了承していても、会社の判断で年末調整を行わないことは認められない。
令和8年分の年末調整の主な改正点
令和8年分は、令和8年度税制改正により、例年以上に確認事項の多い年となる。基礎控除や給与所得控除の見直しにより、所得税の課税最低限は178万円に引き上げられた。
| 項目 | 令和8年分の内容 |
|---|---|
| 基礎控除 | 合計所得金額に応じて段階的に引き上げ |
| 給与所得控除の 最低保障額 |
令和8年分・9年分は特例により74万円 |
| 扶養親族等の 所得要件 |
62万円以下(給与収入のみの場合は136万円以下)に引き上げ |
特に扶養親族等の所得要件の引き上げにより、前年は対象外だった家族が新たに扶養親族に該当するケースが出てくる。従業員から提出される扶養控除等申告書の内容は、例年以上に丁寧に確認しておきたい。
まとめ
・年末調整は、所得税法第190条に基づく会社の義務である
・扶養控除等申告書を提出していない人、給与2,000万円超の人は対象外
・怠った場合は第242条、納付しなかった場合は第240条の罰則がある
・従業員の了承があっても、会社の判断で省略することはできない
・令和8年分は改正点が多いため、早めの準備が必要
年末調整は、大多数の従業員の確定申告の手間を省き、税務署側の事務負担も減らす合理的な制度である。一方で、その事務負担を給与の支払者、特に中小企業に負わせることについては、慎重であるべきだろう。いずれにしても、現行の法令上、年末調整は会社の義務である。改正の多い令和8年分は、早めに準備を進めておきたい。
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