後継者が読むべき決算書 第1回 決算書をもらったら最初に何を見るか
2026.09.30
税務
会社を引き継ぐとは、取引先や従業員、技術や信用だけでなく、その会社が積み重ねてきた財務の履歴を引き継ぐことでもあります。
決算書は、その履歴を読み解き、次の意思決定につなげるための資料です。
本シリーズでは全3回にわたり、後継者が決算書から経営の輪郭をつかむための読み方を解説します。
決算書は、税務署へ提出するためだけの書類ではありません。
過去の経営判断がどのような結果を生み、会社が現在どの位置にいるのかを確かめるための資料です。
先代から会社を引き継いだばかりの経営者から、「決算説明を受けても、結局どこを見ればよいのかわからない」と聞くことがあります。
営業や現場を熟知していても、決算書の読み方まで自然に身につくわけではありません。とりわけ、先代が長く財務を一人で管理してきた会社では、数字の意味が後継者へ十分に引き継がれていないことがあります。
しかし、最初から勘定科目を一つずつ覚える必要はありません。
まずは、貸借対照表、損益計算書、キャッシュ・フロー計算書が、それぞれ異なる問いに答える資料であることを理解すれば十分です。
決算書は三つの問いに答える
| 財務諸表 | 読み取る問い | 最初に見る項目 |
|---|---|---|
| 貸借対照表(B/S) | 会社はいま何を保有し、それを借入と自己資本でどう賄っているか | 現預金、借入金、純資産 |
| 損益計算書(P/L) | 本業はどの程度の付加価値と利益を生み出したか | 売上総利益率、営業利益 |
| キャッシュ・フロー計算書(C/F) | 利益がどのように現金へ転換され、何に使われたか | 営業CF、設備投資、借入返済 |
三つの財務諸表は、同じ会社を別の角度から見ています。
P/Lが黒字でも、売掛金や在庫が増えて現金が減っていることがあります。反対に、一時的な損失で赤字になっていても、本業の収益力や資金余力まで直ちに失われたとは限りません。
一枚だけを見て結論を急ぐと、会社の実態を読み違えます。
まず押さえたい五つの数字
最初に見る数字を絞るなら、次の五つです。
単年度の金額だけでなく、少なくとも三期分を並べ、増減の理由まで確認することが重要です。
- 現預金:目前の支払いに耐えられる余力があるかを確認します。
- 借入金:残高だけでなく、年間返済額と返済期間も見ます。
- 純資産:過去の利益の蓄積が増えているか、毀損しているかを確認します。
- 売上総利益率:値決めと仕入れを含む、商品・サービスそのものの採算を見ます。
- 営業利益:本業が人件費や家賃などを負担したうえで利益を残せているかを見ます。
大切なのは、数字の良し悪しを一律の基準で判定することではありません。
現預金が減ったなら、設備投資によるものか、売掛金の回収遅延によるものか。借入金が増えたなら、成長投資のためか、赤字を補うためか。同じ増減でも、意味は全く異なります。
決算書を読むとは、数字の背後にある経営判断を確かめることです。
税務の視点
会計上の利益と税務上の所得は一致しない
法人税の計算では、P/L上の当期純利益を出発点に、交際費の損金不算入額や減価償却超過額などを加減算して所得金額を求めます。
したがって、会計上の利益だけで納税額を判断することはできません。
また、B/Sの純資産は、非上場株式の評価や事業承継を考えるうえでも重要です。評価方法は会社規模や株主区分などにより異なりますが、利益の蓄積は株式価値に影響し得ます。
後継者にとって、決算書を読むことは納税予測と承継準備の出発点でもあります。
次回は、B/SとP/Lから会社の体力と収益力を具体的に読み解きます。
第2回「会社の体力と収益力はどこに表れるか」へ
シリーズ「後継者が読むべき決算書」
- 第1回 決算書をもらったら最初に何を見るか(この記事)
- 第2回 会社の体力と収益力はどこに表れるか
- 第3回 黒字でも会社は行き詰まる
※本記事は2026年10月時点の法令等に基づく一般的な情報です。個別の判断については専門家にご相談ください。
2026.09.30




